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水産増殖学研究室
NEWS
写真1 田村先生 水産増殖学
写真2 サハリン・ブッセ湖の夜明け

2007年12月30日

新年に向けて

 今年もあと1日となりました。知床やサハリンでの調査、網走湖や網走川水系流域問題への取り組み、能取湖の青潮などいろいろな事がありました。
 さて、今年はアクアバイオ学科が立ち上がってから2年、来年は3年目を迎えます。そして、いよいよ来年4月から研究室にアクアバイオ1期生が配属になります。研究室配属になると、実験やゼミ、卒業研究の準備など研究室で過ごす時間も長くなります。また、3年目の専門科目の講義も数多くあります。
 増殖研の3名のスタッフは計8つのアクアの講義科目を担当していますが、その1つに3年生対象の水産増殖学という科目があります。日本では水産増殖学というタイトルの講義はおおよそ15大学で行われています。
 さて、水産増殖とは何でしょうか?「水産増殖」という言葉は何となく目にしたことがあるかもしれませんが、ちゃんと説明するとなると、どうでしょうか。
 写真は北大名誉教授の田村正先生(故人)が昭和31(1956)年、今から51年前に書かれた水産増殖学という専門書です。実はこのタイトルの講義が各地で行われていても、このタイトルの本というのは意外にありません。
 田村先生は「水産増殖とは、有用水産生物の生産を増すために人為的に行う施策のことであり、その方策は養殖と繁殖保護である」と述べられています。
 「養殖と繁殖保護」とは、水生生物の繁殖システムの解明・制御、ならびにその生態と生息環境の解明・保全、と言いかえることができます。私たちの研究室は生態学や進化生物学をベースとした「新しい水産科学」を目指していますが、水産増殖学を学ぶ上でも、原点を見失うことなく、かつ新たな視点・広い視野から、今の私たちに要請されているテーマに取り組んでいきたいと考えています。
 さて、写真2は今年行ったサハリン・ブッセ湖の夜明けです。将来的にはさらに北を目指して、オホーツク海をぐるっと回るような調査ができれば…と考えています。それでは、今年1年、本当にありがとうございました。来年もどうかよろしくお願いいたします。良いお年を。

写真1 オシンコシンの滝
写真2 岩尾別川
写真3 羅臼岳、知床連山

2007年12月

世界遺産の河川の現状

 先月のことになりますが、アクア2年生の実習で知床に行ってきました。実習のテーマは”世界遺産・知床の河川の現状について学ぶ”です。
 大学からバス2台に分乗して、目指したのは知床半島のウトロという街です。大学から1時間半少しでウトロに到着です。写真1はウトロに着く前に立ち寄ったオシンコシンの滝での休憩時間の様子です。
 まず、ウトロにある知床自然センターで、知床財団の野別研究員に、知床の河川の現状についてご講演をしていただきました。その後、実際に岩尾別川の見学に行きました(写真2)。天気に恵まれて羅臼岳をはじめ雪をかぶった知床連山の姿をみることができました(写真3)。今回お世話になった知床財団は知床半島の自然環境の保全・調査研究・普及教育活動を行っている組織で、みなさん本当に一所懸命に活動されています(知床財団HP)
 知床半島には数多くの河川がありますが、知床連山という背骨から海へ向かって急峻な地形を流れ落ちていくので、いわゆる普通の河川の「上流域のまま」海とつながっているという特徴があります。
 そういう川へ、9月記事にも書いたようにカラフトマスやサケが遡ってくるわけですが、まさに海洋生態系から陸上生態系へ「タンパク質(物質)が移動(循環)して」おり、それが知床の自然を特徴づける大きな要因にもなっています。
 一方で、大雨が降ると激しい土石流が起こり、まさに岩がドカドカ襲いかかってくるような荒々しい自然があります。川の下流で生活する人間にとってたまったものではありませんし、たびたび深刻な被害にあってきました。そういうわけで、実は知床半島の川という川に300基以上の小型ダムなどの川制圧装置が設置されています。
 知床連山という地形・地質を背骨と心臓とし、血管網のように張り巡らされた川は、知床の動植物と人間に計り知れない恵みをもたらしていますが、人間の生活から見れば抑えなければならないものでもあります。
 しかし、ただ力ずくで抑え込むだけでは、河川流域生態系が本来持つ「健康」を低下させ、ついには生態系サービスが低下してしまいます。「我々人間は川とどのようにつきあっていけばいいのか」、これが今回の実習のレポートの課題です。
 実は今月、北海道主催の放送大学講座で「海跡湖」をテーマに流域の問題を取り上げました。放送ではキャンパスに近い網走川水系を例にお話しさせていただきました。インターネットでも見ることができます(ほっかいどう学HP)。地道にこの問題に取り組んでいきたいと思っています。

サハリン航空
ブッセ湖の朝
サンプル測定中

2007年11月

ゆきゆきてサハリン

 10月末にサハリン南部のブッセ湖で、沿岸動物相調査を行って来ました。当初の目的は、サハリン沿岸の動物相やそれらの生態、生活史などを、知床半島と比較することでした。しかし、いざ旅行計画を煮詰めだすと、ロシアの法律上の問題など数多くの困難に直面してしまいました。そこで今回は欲を出さずに、まずはその前段階と位置づけて、予備的な調査をしてきた次第です。
 サハリンは北海道のすぐ北に位置していますが、沿岸生物相に関してはほとんど明らかにされていません。知床世界自然遺産でさえそうなのですから、これは想像に難くないことでしょう。とはいえ、生物相を理解するということは、漁業をやるにしても、環境保全をやるにしても、何を差し置いてもまずやるべき仕事だと、我々は考えています。
 「サハリンには北海道が失った原生がある」という人は大勢います。しかし、実際に生物を手にとって見ると、話はそんなに感傷的なものでも、単純なものでもないように感じました。感じたことを実証するのが研究者の仕事ですから、本当の調査はこれからになります。

写真1
写真2
写真3

2007年10月

サケの増殖事業に関する実習

 去る10月1日から2泊3日の日程で日本海側の留萌市の近くにある増毛町に生物生産学科水圏環境学研究室3年生の実習に行ってきました。増毛漁業協同組合の指導のもと、シロザケの捕獲、採卵、受精までの過程を実習してきました。また、北海道立水産孵化場道北支場の施設も見学させて頂きました。
 増毛町を流れる暑寒別(ショカンベツ、アツカンベツと読んだ学生がいました)川で捕獲したシロザケは、採卵場の池で、成熟まで一時的に蓄養されます。十分成熟したら、池からサケをタモ網で採り、コンベアに乗せ採卵施設内に運びます(写真1)。施設内ではすぐに腹を開き、卵を取り出し(写真2)、乾導法と呼ばれる方法で受精させます。その後、道立水産孵化場道北支場に運ばれ、春の放流まで大切に育てられます。
 今回の実習で30万粒の卵を受精させたそうです。これらの卵が放流まで成長するのは約3分の2だそうで、20万尾が放流され、4、5年後にはその内の約4%が帰ってくるので、実習を行った3年生たちは約8000尾のシロザケの親になったわけです。
 写真3は帰りの休憩ポイント、神居古潭(カムイコタン)です。地名はアイヌ語で神の住む場所だそうです。1960年代まで吊り橋の対岸には現在サイクリングロードとなっている旧函館本線が走り、神居古潭駅がありました。この旧駅舎は復元され、今は休憩所として開放されています。石狩川の神秘的な流れと古い駅舎はとても良い雰囲気です。近くを通る際には是非立ち寄ってみて下さい。
 末筆となりましたが、今回お世話になりました、増毛漁業協同組合様と北海道立水産孵化場道北支場様に厚くお礼申し上げます。

ルシャでの調査風景
クマを眺める調査隊員
夕暮れの阿寒湖

2007年09月

問題は人間にあり

 8月27日から9月3日にかけて、今年度最後となる夏の知床調査に行ってきました(写真1)。これまで同様、羅臼やウトロの基地から半島の各調査地点へ船で移動したり、岬先端部でキャンプしながらのフィールドワークです。去年から始まった知床海岸調査ですが、これまで印象に残った事の一つは、世界遺産、手つかずの自然というイメージの知床も、旺盛な人間活動の範囲内にあるんだということです。ただ相対的に、自然度が高いのは確かです。
 今回はルシャという知床ヒグマ国の首都にも行きました。首都だけあって密度が高く、ルシャ川をさかのぼってくるカラフトマスをねらうクマに何頭か会いました(写真2)。遡上するマスの数はすごいもので水が真っ黒に見えます。クマにとっては願ってもないごちそうであることが実感できました。また、このような風景を沖の観光船からたくさんの人が眺めていました。世界遺産として私たちが知床の自然とどのようにつきあうのか、普遍的で重要なテーマだと、知床に行くたびに思いが強まります。
 写真3は雄阿寒岳7合目付近からみた夕暮れの阿寒湖です。マリモで有名な阿寒湖ですが、ワカサギ漁業も営まれています。周囲には摩周湖、屈斜路湖など有名なカルデラ湖や堰止湖がたくさんあります。湖はいつ見てもあきないものです。ここには知床をはじめとして、本当にたくさんの特徴ある自然環境があります。そうした自然にすぐに触れられるのが網走、オホーツクキャンパスです。本当に恵まれたところだとつくづく思うと同時に、人間と自然の関係をじっくり考え、学び問うことができる場所だとも思っています。

潜水準備中
移動中その1
移動中その2

2007年08月

潜って観察

 研究の手法というのは、調べる対象や目的に応じて大きく異なります。動物の生態を研究する場合は、野外での調査・実験は欠かせません。野外では、机上ではなかなか想像できない多くの発見をもたらしてくれます。
 水産増殖学研究室では、生態学から考える水産増殖を目指していますので、野外で調査・実験を行うことが少なくありません。研究対象が水中にいる場合がほとんどですから、ときには潜って観察することもあります。陸上からは決して見ることのできない面白いドラマが、まさに水面下で展開されています。
 この日は、能取湖のアマモ場で、ホッカイエビ(北海しまえび)を観察・採集しに出かけました。赤旗を持って泳ぐ様は、多少奇妙ですが、やっている当人は大真面目です。そうそう、野外調査にはマナーも重要です。このような調査は、北海道の特別採捕許可および漁業協同組合の承諾を得た上で行っています。地元の役に立つ研究を行いたければ、まずは地元の皆さんの理解を得ること、これが私たちのモットーです。

いざ観測地へ
装置回収中

2007年07月

オホーツクのほたて研究

 日本全国に流通しているホタテガイ(ほたて)の60%近くが、オホーツク海産です。さらに、あちこちの地域で養殖対象となっているホタテガイの多くも、元々はオホーツクから出荷されています。言い換えれば、ホタテガイを安定して流通させるためには、オホーツク海はとても重要な海域なのです。それだけに、古くからホタテガイの研究はオホーツクで盛んに行われており、先人たちによる研究成果は世界的にも大変有名です。
 そんなホタテガイですが、彼らがいつ、どこで何を食べているのか、実はよく分かっていません。意外だと思いませんか?海産生物の研究は、いくら古くから研究されていると言っても、まだまだ分からないことだらけなのです。
 我々は現在、西網走漁協の協力を得て、能取湖(海水の湖)に大規模な装置を沈めて、ホタテの成長観測と食性解析を行っています。この装置では、水深と季節ごとに、ホタテガイが何を食べて、どれくらい成長しているのかが、分かるようになっています。どんな結果が得られるかとても楽しみですし、何より、未来のホタテガイ漁業に貢献できると思えば、やる気も倍増です。

ヒグマ
調査風景

2007年06月

春の知床調査

 水産増殖研究室では、昨年度から環境省の委託を受けて、知床半島世界遺産区域の海岸動物の調査を行っています。これまで全く調べられてこなかっただけに、全く白紙の状態から、いつ、どこに、どのような動物がいるのかを記載していく調査です。
 世界遺産区域には、珍しい海産動物が多数いますが、あまり出会いたくないヒグマも多数います。観光地で出会うと思わず嬉しくなるヒグマですが、手付かずの自然の中で出会うと、それは動物同士の対峙です。熊を熟知した知床財団のスタッフ(野別貴博さん)の指導の下、安全に配慮しながら慎重に調査を進めています。写真上は、知床岬先端でであった熊。写真下は、調査を終えて国後島をバックに散歩中。

ホッカイエビ
実験器具

2007年05月

良い子、悪い子、普通の子

 オホーツク海の5月は、様々な動物の幼生がふ化する誕生の季節でもあります。一般に海底に棲む貝や甲殻類は、ふ化した後のある期間、浮遊幼生(プランクトン)として海を漂います。最初は似ても似つかない幼生ですが、徐々に親に似た形になって着底します。
 しかし、ホッカイエビ(北海しまえび)の幼生はちょっと変わっていて、エビの形でふ化し、漂うことなく着底します(写真上)。そのような着底できる幼生を産むために、母エビは9ヶ月もの間、ずっとお腹に卵を抱えて育てています。この母親の負担たるや、他の海産動物よりも遥かに大きいはずです。見方を変えれば、母親の質いかんで子供の質が大きく変わってしまうかもしれません。私達は、良い母親ほど良い子供を産めるのではないかと予測し、母親の質と子供の質の関係を調べています。

模様替え

2007年04月

新年度はじまる…研究室の模様替え

 水産増殖学研究室も2年目を迎えました。今年と来年は生物生産学科旧水圏コースで水野先生と千葉先生に所属の3・4年生が学生実験、演習、卒業論文や修士論文をこの研究室で行います。アクアバイオ学科の3年生が正式に研究室配属になるのは来年4月からで、彼らが4年生となり、アクア第1期生としてはじめての卒論に取り組むのは、再来年の4月からということになります。
 少しややこしいですが、大学生活後半の大切な時間を過ごす場所として、当研究室はスタートから常に学生・院生の熱気にあふれています。そうして実際に新しくできたこの研究室を使ってみると、いろいろな改善点や共通のルール作りなど、思い当たることがたくさん出てきました。
 ということで、まずは学生・院生室の模様替えを行いました(写真)。奥の壁際に院生の机が、手前に4年生用の机が配置されています。しかし、ここが賑わうのは就職活動が終わる夏ごろから…でしょうか。机が出番を待っています。


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 所属教員と研究テーマ

水野 眞 教授 e-mail:

【専門分野】

珪藻類の生物学

【現在取り組んでいる主な研究課題と内容】

珪藻類の系統進化


園田 武 講師 e-mail:  個人ホームページ

【専門分野】

水産生態学、保全生物学、汽水生物学、インパクト・アセスメント

【現在取り組んでいる主な研究課題と内容】

オホーツクキャンパスのある網走周辺は、数多くの沿岸海跡湖や大小の河川があり、それらは沿岸域生態系の大切な構成要素であると共に、地域水産業を支える重要な漁場にもなっています。こうした漁場環境において持続的な漁業生産を確保し、水産資源の増殖を図るためには、まず漁場となっている水界生態系、水界生物群集の構造と機能を解明するための基礎的研究が必要です。そして、生態系と生物群集の定期的な健康診断を実施し、その健康が維持されるような知恵と協働作業が望まれます。「健康な漁場環境こそが、おいしく安全な魚介類を育てる」、この様な生態系保全型漁業の確立のために、下記のようなテーマを設定して研究を進めています。

1)沿岸性ならびに汽水性魚介類の生態学的・自然史学的研究

2)沿岸増養殖漁場の環境保全と生物モニタリングに関する研究

3)沿岸域の生態系定量評価手法に関する研究

4)漁業活動、または人為的環境改変事業が水界生態系に及ぼすインパクトの定量評価

5)河川流域生態系および沿岸域生態系の連関に関する研究


千葉 晋 講師 e-mail:

【専門分野】

進化生態学、水産学

【現在取り組んでいる主な研究課題と内容】

崩壊することのない持続的な漁業に貢献したいと思っています。特に関心をもって調べていることは、進化から考える水産資源(魚介類)の管理です。自然生態系の一部としての「漁業」を考えます。その他には知床・網走の海岸の生物相や、貝類・甲殻類の生物史や行動なども調べています。



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 卒業研究のテーマ
  • オホーツク沿岸に生息する珪藻の分類と進化

  • 培養法による珪藻の生理生態学的研究

  • 能取湖のマクロベントス群集構造と環境特性:湖口開削後30年間の漁場環境変化の研究

  • 網走湖・網走川河口域におけるヤマトシジミの産卵の時空間的パターンに関する研究

  • 漁獲に起因するホッカイエビの生活史変異

  • 貝類の遺伝形質にみられる緯度間変異 〜なぜ、オホーツクの貝類は凍死しないのか?〜


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